2015年06月10日

論文紹介

私の知り合いが素晴らしい業績を発表したのでちょっと紹介

Int J Antimicrob Agents. 2015 Apr 30. pii: S0924-8579(15)00155-7. doi: 10.1016/j.ijantimicag.2015.03.010. [Epub ahead of print]
Changes in the pharmacokinetics of teicoplanin in patients with hyperglycaemic hypoalbuminaemia: Impact of albumin glycosylation on the binding of teicoplanin to albumin.
Enokiya T1, Muraki Y1, Iwamoto T1, Okuda M2.
PMID:25982916

テイコプラニンのローディングドーズ後の濃度は大きな変動があるために、そこの一つの原因として高血糖による糖化アルブミンへのタンパク結合率の影響を調べてみたという報告。後ろ向きに検討したところ、高血糖&低アルブミン患者では、ローディング後の濃度が実際に低値を示しており、分布容積が増大していた。そして前向きに糖化アルブミンとテイコプラニンの結合解離定数は相関していたとの報告である。

なるほど、視点がとても面白い。高血糖患者ではテイコプラニンは増量しなければならんようだな。





ちょっと気になる点を(あくまで批判的に見た場合の話)書いてみる。私自身はこの論文は賛成派なので、気を悪くしないでいただきたい。

クリアランスが変化しない理由が分からない。遊離体が増えればクリアランスは増えるはず。考察にいくつか書いてあるが、そもそもこの研究ではローディング後の血中濃度を用いたベイズ推定でPKを算出しているので、そこではクリアランスを予測する十分な情報がなかっただけと考えるべきであろう。長期的に見れば、維持投与量には影響しているのではないかと考える方が妥当だと考えられる。私はこの論文を読んだとき、維持量の増量まで必要であろうと考えた。ふつうこの手の報告は、分布容積を見れば十分だと思われるが、変なレフェリーにつかまったのかなと思うのは考えすぎか。

そして統計解析のところでbonferroniを用いているが、図1からはbonferroniで調整してP<0.05とあるが、ということは、もともとのpは0.017未満だったということであるが、図から受ける印象としては本当かなぁと思ってしまったww。おそらくは問題ないはずであるが、ダネットなどを使った方がすっきりしたんじゃないかと思う。
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2015年03月20日

ホスホマイシンを使いこなすためには

こんな文献がある。かいつまんで訳しておく
Argyris SM, et al. The revival of fosfomycicn. Int J Infect Dis 2011; 15: e732-e739
PMID:21945848

1.Introduction
ホスホマイシン(FOM)は1969年にスペインで発見された。このリン酸誘導体は低分子量で血漿タンパク結合をほとんど示さず、どの抗菌薬にも属さない。

2.構造
経口:ホスホマイシン-トロメサミン(水溶性となりバイオアベイラビリティの向上, 40%。一方Ca塩は12%; 日本ではCaであることに注意
静注:ホスホマイシン-2Na塩

3.作用点
グラム陽性菌、グラム陰性菌において細胞壁合成阻害:ホスフェノールビルビン酸合成阻害
L-α-グリセロリン酸輸送系(GlpT)かヘキソースリン酸取り込み系(UhpT)によって細胞内に侵入する
N-アセチルムラミン酸の形成をブロックすることでペプチドグリカン合成阻害を示す。
βラクタム、アミノグリコシド、キノロンとシナジー効果を示す。

4.PK_PD
腎排泄率95%, 尿細管分泌なし。
移行性がよく、前立腺や肺、さらには骨、髄液、膿瘍、心臓弁までも浸透する。
髄液で治療濃度を確保するには8g×3/dayが必要との報告がある。
時間依存性の効果を示す。

5.感受性
ブレイクポイントはS:MIC<=64, I:MIC=128, R:MIC>=256

6.適応菌種
広域である。MSSAやMRSA, Enterococcus属(VRE含む)のようなグラム陽性菌に殺菌作用を示す。また大腸菌やプロテウス、クレブシエラ、エンテロバクター、シトロバクター、セラチア、ナイセリア、シゲラ、サルモネラなどのグラム陰性桿菌に良い活性を示す。ただ、緑膿菌やアシネトバクターは通常耐性を示す。
そして、アミノグリコシドやβラクタムとの併用でも効果的である。バクテロイデスには耐性。peptostreptococcusなどには効果があるが、ペニシリンよりもよいとは言えない。
バイオフィルム破壊作用もある。これは特にキノロンやアミノグリコシドと併用すれば顕著である。

7.耐性機序
主には染色体性の変異。プラスミドの場合もある。

8.臨床使用
経口:
主にUTIに関してエビデンスが豊富だ。ホスホマイシンートロメサミンの内服は吸収がよい。3g単回投与で1-3日は尿中濃度が治療域を持続する。キノロンなどの7-10日間投与と比較しても劣らない。妊婦にも安全である。さらに、動物に対しての投薬がないのも特徴。
静注:
院内感染症としては肺炎、骨髄炎、髄膜炎、外科感染症、敗血症、腹膜炎、糖尿病性足感染症など、様々な感染症で有効性を示してきた。
アミノグリコシドやコリスチンなどの腎傷害を軽減する作用がある。

9.投与量
経口:3gの単回投与で十分である。より重症な場合は2-3日必要となる。腎傷害等でも投与量調整は必要ない
静注:平均して12-16g/dayを2-4分割。重篤(life threatening)の場合には20g/dayまで上げることもある。(日本の添付文書では4gが上限である)

10.禁忌と注意
禁忌は過敏症くらいなもの。
経口:下痢(10%)、嘔気(5%)、腹痛(2%)など書いてある。日本の添付文書参照でよいと思われる。
静注:Naをホスホマイシン1g中に14.4mEq含むので要注意とのこと。そして低カリウムが26%と副作用で挙げられている。(日本の添付文書ではあまり記載がない。高用量使う場合に注意が必要とのことか。)

11.相互作用
ほぼデータ無し。メトクロプラミドとの併用で経口の場合血中濃度が低下するかもしれない。

12.シナジー効果
βラクタムとアミノグリコシドなどとのシナジーが確認されている。

13.免疫調節効果
・T-cellに作用してIL-2産生抑制する。
・B-cellに作用して好中球からのロイコトリエンB4産生抑制し、続いて単球からのIL8のmRNA表現を抑制する。
・炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-1, IL-6を抑制する。が、否定する意見もある
・多核好中球の貪食作用を活性化し、活性酸素産生能も増す。


とりあえず今日はここまで。
(Conflict of interest:なし。)



それと、第7回のBMs-Podの懇話会も3名以上のエントリーがございましたので開催が決定しました。
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2015年01月27日

バンコマイシンを投与した患者では透析からの離脱が遅れる

J Crit Care. 2014 Aug;29(4):656-61.
Renal outcome after vancomycin treatment and renal replacement therapy in patients with severe sepsis and septic shock: a retrospective study.
Otto GP, Sossdorf M, Breuel H, Schlattmann P, Bayer O, Claus RA, Riedemann NC, Busch M.

ドイツからの報告。ICU退室時にAKIによる透析から離脱できているかを調査した後ろ向き研究。やはり後ろ向きだからか、APACH IIスコアやSOFAなど、バンコマイシン投与群の方が悪い。逆に整理すると、バンコマイシン投与群の方が重症なのである。つまり重症だから離脱が遅れるのは普通に考えて当然である。バンコマイシンをディスるための論文のような気がしてあまり好きではないなぁ。他の腎毒性の薬剤が進められるかもとは書いてあるものの、具体的には書いてない。どっか製薬会社からグラントでも得ているかなと思ってCOIを見るが特に記載なし。
ただ、Acknowledgementに数名書いてあるな。ここが曲者なのかどうか。


いかんいかん、朝から懐疑的な目線ばっかりでは気が滅入る。さて、ICUに行こう
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2015年01月11日

CRRT時のβラクタム系抗菌薬の投与方法

今日はこの二つの文献にサッと目を通した

β-lactam antibiotic concentrations during continuous renal replacement therapy.
Beumier M, Casu GS, Hites M, Seyler L, Cotton F, Vincent JL, Jacobs F, Taccone FS.
Crit Care. 2014 May 22;18(3):R105. doi: 10.1186/cc13886.
PMID:24886826

Beta-lactam dosing in critically ill patients with septic shock and continuous renal replacement therapy.
Ulldemolins M, Vaquer S, Llauradó-Serra M, Pontes C, Calvo G, Soy D, Martín-Loeches I.
Crit Care. 2014 Jun 23;18(3):227. doi: 10.1186/cc13938.
PMID:25042938

目に留まった要点は以下
・まだ確定した推奨投与量はない
・開始用量は通常量(つまり腎機能正常患者と同様)
・24-48時間経過後に減量(←ここが定まっていない)
・CRRTの条件にはやはり影響があるが、具体的にはまだ難しい
・TDMは問題解決のための良い手段かもしれない(may, mightクラス程度の推奨)
・ターゲット%T>MICも定まっていない。


・以下私的コメント(多少厳し目に書いていますがww)
もうなんかね、バカなんじゃないかと。何がって? なぜβラクタムでTDMが普及しないのか。
例えばメロペネムに関してはこれまで20年近くCRRTに関しては研究がなされているわけなのにも関わらず、まだ確定した投与量が定まっていないわけですよ。その間に微生物は確実に耐性化し続け、一方で十分にこの状況を認識できていない臨床医による不十分な投与量が、患者の予後、死亡率に影響している。
これまでTDMと言えば副作用を防止する意味合いであった。しかしそれは10年以上前の概念になった。今や効果を最大化するために行うと言うのは常識になった。私の考えるTDMの目的はこれらを融合した言葉として、
"有害事象を防止する"
としている。有害事象とは副作用とは異なり、薬でいえば、薬を投与することにより受ける患者、及び環境の不利益である。副作用はいいこともあるが、有害事象は悪いことそのものを指す。抗菌薬の場合、それは菌の耐性化から効果不十分などを指すわけである。

今やPK/PDにより抗菌薬の効果を最大化することが可能になった。CRRT時はまだ不確定と言えるかもしれないがそれは最低ラインの話になる。患者の状態が悪い場合はより高い値が望ましいと言う理論を理解するのは難しいことではない。ひとまずのTDMの指標はココになろう。もちろん例外がないわけではない。

TDMを回避して一般化した投与設計を添付文書等に盛り込んでいくと言う現在の流れがある。例えばレボフロキサシンはPK/PDの概念からピーク値を上げて耐性化を防止するために、一回投与量が500mg, 24時間おきとなったのは記憶に新しい。知らない薬剤師がいれば十分に反省するべきである。しかしながら腎機能障害時の投与量はいかがなものか。初回のみ500mg, 以後250mgとなっているのが添付文書である。一方サンフォードでは一回投与量は変えずに750mgの投与間隔を延ばすのみである。どちらがPK/PDに即しているかは言うまでもないだろう。私は後者を選択している(750mgを投与することは稀ではあるが)。他にも、アミカシンの血中濃度を60μg/mLまで上昇させようとすると、みかけでは分からない、実際に測定すると15mg/kgを超えなきゃいけない患者は多数存在する。ピークを上昇させるためには分布容積を考慮することが必要だが、分布容積の想定は思いのほか難しいことが理解できる。この現象をレボフロキサシンに置き換えた場合、本当にTDMの必要がないでしょうか。
つまり、必ずしも最適な投与量を達成できていないわけである。

一般的に薬の臨床効果があるorないを判断する基準は、80%の患者で効果があるかどうかというの(80%有効率)を、以前論文の査読者に指摘されたことがある(本当かどうか分からないが)。だからモンテカルロシミュレーションを実施する際にも、目標達成率80%を一応の目安にしている。しかし抗菌薬療法は別に考えるべきだと思う。バンコマイシンを10-20μg/mLに100%達成できるのは、もはや薬剤部に頼めば当たり前にしてくれるでしょ、出来なかったら何やってんの?! という世の中になってしまった。確かにTDMをしっかり行えば100%は達成できる。むしろ100%達成できなければ、達成できなかった患者に有害事象が生じる。もしもここに耐性化が生じれば、100%を逃れた数%が耐性菌のリザーバーとなり、その他の患者、病院に大きな影響を与えるわけである。有効率を80%とした場合、そのリザーバーが20%存在すると言うわけだ。考えれば考えるほど、80%有効率でよいわけがない。

もしもTDMが可能になれば、このような問題点はなくなるだろう。可能になると言うのは保険診療が可能になることだけにとどまらず、現場で迅速に測定できる環境が整うと言うことだ。急性腎傷害(AKI, "障害"ではなく、"傷害"が正しいとされている)のような病体で外注し、2-3日後に結果が返ってくるでは遅すぎる。遅くとも半日で判断できなければと思う。現在のβラクタム薬はHPLCがほとんど。LC/MS/MSがより確立、普及されればもっと早くなるか?(ここは詳しくない)。細菌検査室などでは現在MALDI-TOF MSの導入が少しずつ進んでいる。どちらも初回導入コストはかかるものの、維持費はそうでもないと聞く。ならば薬剤部でも導入をもっと考えても良いのか。



こういう視点での研究を展開したい。つまりTDMを実施することで有害事象を回避することが可能になるのかどうかが焦点だが、TDMで回避できない有害事象であれば、PK/PD理論をCRRT患者に当てはめることが問題であると指摘できる。そしてTDMの推奨度をshould, mustに上げれば、世論を動かせると思う。
まだまだ未知数だが、どなたか一緒にやりましょう(^^
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2015年01月06日

CcrはGFRを過大評価する

Nakata J, et al. Risk of overestimation of kidney function using GFR-estimating equations in patients with low inulin clearance. J Clin Lab Anal 2013; 26: 248-253

今日は基礎的な情報だけれども、なぜかあまり意識されないことも多い重要な概念を報告する。

この報告はイヌリンクリアランス(Cin)とクレアチニンクリアランス(Ccr)、eGFR算出式などの相関について調査してある。とてもimpressiveな図がFig 2だ。相関式はCcr = 1.0886×Cin + 23.231となっている。R2も0.7585と高い。

何がimpressiveかというと、基本的にはCcrはCinよりも高いというのはこれまでも言われてきたが、それを明確に示した点であることは言うまでもなく、Cinを日本人においてしっかり測定してあるのである。これは多くの臨床医や薬剤師に説明しやすい図となっている。クレアチニンは尿細管分泌を受けるが、その程度は小さいためにGFRを示す、なんてことが言われてきたが、その程度に関する報告は古いものばかりだった。

R2が高いのはどちらも実測値なので特にフーンという感じしかないのだが、ただ、切片が23, 傾きが1.0886であることが面白い。つまり、ほぼ一定して23mL/minの尿細管分泌があるんですよということを示すのであるこの図は。

23mL/minの尿細管分泌速度、どう思いますか? 例えば尿測で得られたCcrが50mL/minであった場合、GFRは平均して25mL/min程度しかないことを示しているというわけである。


薬物の投与設計を行う場合、例えばクラビットならばCcrで投与量を調整する必要性がありますね。ただそれは原著をたどれば、CG式による値であることに注意する必要がある。尿測による値ではないのである。CG式では30mL/minとされたが、例えば尿測で60mL/minと出た場合、通常量を投与してよいのかどうか。いいかもしれないし、ダメかもしれないが、基本的にはダメだと考えた方がよいだろう。

ここに、検査をする意義について話を発展させれば、基本的には検査をする場合にはあらかじめどういう結果だったならばどういう介入が必要になるかを予測しておくことが必要である。ベイズの定理で言えば事前確率というやつに近い(が別)。今回のケースで言えば、CG式で30mL/minと出た以上に尿測を行ってCcrを算出する意義について考えてみたい。尿測がより高くなるケースということは、そもそもCG式である程度予測できる患者ということになる。すると、そもそも尿測の意味がないわけである。念のため、という意義になる。一方、本当の意義は逆にあって、CG式による値より低いのではないか、ということを確認する意味で尿測をすることになる。例えば長期臥床等で筋肉量が低下している場合などになりますね。尿測で30mL/min, 20mL/minと出たならば、より減量が必要かもしれないという視野を手に入れるのである。
今回はクラビットを対象にしたが、例えばデノシンならばよりシビアになるわけである。


こんな目線も大事ですよというお話でした。繰り返しますが、CcrとGFRは違います。GFRの方が低いのです。
posted by だっちょ at 20:05| Comment(0) | ジャーナルクラブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする