2017年08月30日

CRRT 時のセファクロルの投与量を考察する。

今回は大腸菌尿路感染症に対するCRRT時のセファクロルの投与量について考察してみる。

まずゴールドスタンダードの1つである某SRSG病院ガイドラインを拝読するに、透析患者では250mg 1日2回とある。保存期腎不全ではCcr 10-50 mL/minで250mg×3, Ccr 10 mL/min以下で250mg×2とある。なるほど。ただし、その根拠を見ると、どうも大きな根拠ではないようだ。

インタビューフォームで薬物動態を評価してみる。む、クリアランスが記載されていない。そこで単回投与時のAUCからクリアランスを評価してみる。250mg投与時のAUCが9 μg・hr/mL のようだから、CL=Dose/AUCの式で、250000μg/9 = 28 L/hr。
経口なので正しくはCL/F = 28 L/hrとなる。バイオアベイラビリティを調べてみると、これまた記載がない。尿中排泄率をみると72-74%などある。考えやすいように75%としておこう。割と尿中排泄率が高いことを考慮すると、少なくとも吸収率は75%以上ありそうだ(吸収されないと尿中排泄されないため)
適当にググってみると、93%のバイオアベイラビリティとの記載も見つかる。pubmedで検索するがこの情報の基は見つけられなかった。ひとまずこの情報を採用し、考えやすいように90%とする。

ということは、純CLは28L/hr×0.9で25 L/hrということか。大きいな。腎排泄率Ae = 75 % とすると、腎クリアランスが18 L/hr, その他クリアランスが 7 Lhr程度となる。

そこでAKIにより腎機能が廃絶した場合の投与量について考えると、腎クリアランス 18 L/hrがほぼゼロになると考えると、体クリアランスは7 L/hr程度まで低下することになり、ここで投与量は25 % まで減らして良い計算になる(Aeの逆と考えてよい)。さらにCRRTを考慮するならば、排液流量 600mL/hrとするならば、血漿蛋白結合率が 25 % 程度のようなので、CRRT クリアランスで450 mL/hr = 0.45 L/hrが得られる。
7L/hrに0.45 L/hを足しても大差ないので、これはつまりCRRTでの投与量調整は必要ないことになる。

さて、では7L/hrの腎外クリアランスがどこまで正しいのか。
Int J clin pharmacol biopharm 1979 17 397-400 によると、尿細管分泌クリアランスは18 L/hr ほどあると書いてある。む、さっきの腎クリアランスそのものではないか。血漿蛋白結合率 25 % を考慮すると、糸球体濾過によるクリアランスは 4 L/hrほどはありそうなので、腎クリアランスは22 L/hr程度になりそうである。この文献には、尿中で分解もしているために、腎クリアランスを過小評価している可能性があると指摘されている。再吸収の可能性もあるが、いずれにせよ、先ほど算出した7L/hrの腎外クリアランスはおそらく最大値で、より小さいであろうことを推測しておく必要があろう。腎機能低下に伴って腎外クリアランスまでも低下する薬物はたくさんある。そこで、感覚的ではあるが、ここは3 - 7 L/hr、ええい、5 L/hrの腎外クリアランスとしておこう。

そうなると、25 L/hrの健康人に対して、CRRT患者のクリアランスは 5 L/hr程度なので、投与量は1/5 までは減量できる、という計算になる。この濃度推移をBMs-Podで確認しておこう。

分布容積 0.2L/kg, 体重 60 kgとして、健康成人クリアランス25 L/hrでは、500mg 8時間おきではトラフ値は0.001μg/mL程度になる。これはインタビューフォームでも確認される。そもそも100% の%T>MICが必要なわけではないので、とりあえずよい。としておく。
一方クリアランス5L/hrで、SRSGガイドラインのように250mg×2とすると、トラフ値0.2μg/mLとなる。上昇した。1/5ではなく1/3(1500mg/日⇒500mg/日)にしか投与量を減らしてないので、上昇するのは当然である。ただ、MICを考えるとどうか。

インタビューフォームからみるE.coliのMIC90は3 mg/Lとある。MIC 3 mg/Lでは、血中 %T>MIC 43 %となる。遊離体を考慮すると 30 % 程度か。一般的なセファロスポリン系薬の目標%T>MIC 60-70% と考えると、これではいかんか。


250mg×3では、トラフ値 1.0 μg/mL, %T>MIC 66 %、遊離体で50 % 程度か。やや低めではあるが、食後投与で吸収を遅らせることが出来るために、もう少し大きめの値が得られそうである。また、尿中では、腎機能障害があるとはいえ、尿は出ている。2 mL/min程度の糸球体ろ過速度があれば、尿中濃度は2倍にはなるので、何とかなるのではないか。まあこれでいこうか。


という流れで投与設計します。なんか所か仮定がありますが、そう的外れなことは言ってないと思います。仮定を重ねているので学術的には証明には至りませんが、臨床的な判断としては妥当でしょう。

実はこの流れで健康成人で、MIC = 3 mg/Lの場合、500mg×3で%T>MICは22%程度になります。あまりよろしくありませんが、一般的には治療できるとされています。免疫が正常な方なら大丈夫なんでしょうが、免疫が弱い方は、しっかりとした投与量が望ましいでしょう。ちなみにS.pyogenesのMIC90は0.2 mg/L程度なので、特に問題ありません。

なんで今回セファクロルを出したかというと、バイオアベイラビリティが高いと、必ずしも効果が高いというわけではなく、あくまでpharmacodynamics(PD)との兼ね合いということを意識するべきと思うためです。


それとタイトルに対する結論ですが、
CRRT 時のセファクロルの投与量調整は特に気にする必要はなく、CKDステージなどで判断して良い、です。
posted by だっちょ at 12:07| Comment(0) | 薬物動態 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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