2017年06月26日

抗菌薬おさらい帳に関するQ & A

先日こんな質問を受けた。なかなかeducationalなので、公開します。

Q.透析患者の場合、の項目で『透析はあくまで血液(細胞外液)の浄化のみ』とあるのですが、細胞外液ということは間質液も透析されるということでしょうか。0.2l/kgの細胞外液で説明があってて、《血液透析なら血液だけで0.05l/kg》が除去されるから0.05/ばんこの分布容積0.6で8パーセントが除去されるとならないんですね?血液と間質液の間の水の行き来はそんなに激しいのでしょうか。ながくなりすみません、つい気になって。。

A.血管内に入った水がどのように移動するかを考えると理解できます。水は体の中で物質を運ぶ担体として存在していますので、どこにでも自由に移動することができます。ただその移動様式は場所場所ごとに様々です。血管から血管外に移動するときは、単純に多孔性の血管壁を通るだけですので、スムーズに外に出ていきます。なんのエネルギーも必要ありません。出ていった先が、間質液になります。その水を担体として、様々な物質が血管外に運ばれます。孔を通るだけですのでたいていスムーズに移動します。しかし、もちろん物が大きければ大きいほど移動が鈍くなります。血管壁の孔の半径は30-35Å程度とされており、分子量69000のアルブミンは半径が36Åですから、基本的には通過できません。逆に、通常の低分子(水:MW=18, 薬物:100-2000)であれば、ほぼ問題なく通過できるわけです。
ほかに水の移動様式は、濃度勾配によるもの、トランスポーター(アクアポリン)によるもの、が一般的です。

ここから先はアンサーしていない追記です。アルブミンは上記のとおり血管外には出ないとなっていますが、実際には多少出て行っています。大体血漿の1/3程度の濃度で間質液に存在しています。
ここから先は私の考えを書きます。
血管内と間質のアルブミンで濃度勾配による水移動がなされていると考えても間違いではありませんが、実際にはその存在比率は一定と考えられていますので、考慮する必要はほとんどないと思われます。ただし、炎症などで一過性に間質液やさらなる先へアルブミンが移動することにより、いわゆるサードスペースへの水の移動が起こると考えられます。つまり、炎症性に血管内のアルブミンが低下する場合、血管内容量を補完しようとアルブミンを投与することもありますが実際にはサードスペースへアルブミンを送り込むことにもつながり、むしろ浮腫を助長するとも考えられます。一時的に確かに利尿は得られますが、そのあとのアルブミンの挙動を考えるとマイナスになると考える方が自然です。つまり、敗血症や炎症性疾患の場合に、理論的にはアルブミンを投与する意義は、細胞外液だけでは何ともならない場合に血圧を維持するためだけと考えられます。

参考図書:薬学性のための生物薬剤学第2版、後藤茂、金尾義治著、廣川書店
posted by だっちょ at 22:46| Comment(2) | Q&A公開コーナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先日の大量出血の記事も含めてとても勉強になりました。ありがとうございました!
Posted by 3stars at 2017年06月27日 13:02
いつもありがとうございます(^^

ベーシックな動態情報をどう扱うかは薬剤師次第だと思いますので、よい診療につなげたいですね。
Posted by だっちょ at 2017年06月27日 16:52
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