2017年04月08日

お疲れ様でした:第91回日本感染症学会総会・学術講演会 第65回日本化学療法学会学術集会

今回も多くの情報交換が出来て、多くの方とつながりが出来た学会でした。ACIDに参加していただいた皆様も本当にありがとうございました。ACIDはお互いの研究成果を提示しあい、建設的な議論からさらに良いものにしようという薬剤師の集まりです。これからもよろしくお願いします。


それと一つ追加で記事を書いておきます。2日目朝の特殊病態のシンポジウムの最後のセッション。HMD先生による肥満病態下の適正投与量の考え方がとてもわかりやすくて、勉強になりました。肥満と高体重は別であり、何が違うかが理解出来れば、定量的な投与設計ができるはずです。
そして最後に質問した点について、私の質問内容も十分でなかったと思うし、その真意などを理解していない聴衆の方も多かったと思うので、追記しておきます。ちょっと難しい内容であることに変わりはないので、そこをわかってもらうように説明することは、とてもchallengingです!

 質問は”基本的に維持投与量はクリアランスの変化を基に決定するべきなのに、今回のアミノグリコシド系薬は体重で決めている。その点どうお考えでしょうか。”ということなのだが、私の質問の仕方の失敗は、”肥満という病態下”の点を十分に質問内容の言葉に含めなかったことだ。大変申し訳ない。

 肥満の場合のクリアランスの変化について、HMD先生はしっかりと講演の中で述べておられる。ただ、アミノグリコシド系薬のピーク値を有効域に入れるために、分布容積の推定の点に絞って、わかりやすく説明しておられたわけである。特殊病態下における投与設計のシンポジウムとして、他の先生方は(私は最後しか聞けてないが)クリアランスの変化について維持投与量の調節の方法を述べておられたはずだ。CRRTにしろ小児にしろ、腎機能障害にしろである。では、肥満の場合に考えるべき維持投与量の調整はどのようなものがあるのか。

 アミノグリコシド系薬のPK/PDのターゲットとして、当然ピークを上昇させなければならないが、”それだけ”を考慮しすぎることには懸念するべきである。ピーク値で評価するために重要なことは、あくまで臨床薬理の根幹であるAUCが保てている、そろっていることである。仮に分布容積が通常と変化ない(0.25L/kg程度)で、クリアランスが500mL/minにまで上昇していたらどうだろうか。このくらい極端なところで考えてみるとよくわかる。一瞬だけピークが目標血中濃度に到達した段階で血中濃度を測定して”よしよし”、トラフ値で検出限界以下の値を測定して”よしよし”としているのは大きな誤りであることが容易に想像できるであろう。半減期は1/5に短縮し、すぐさまMICを下回り、その時間がずーっと続く、という血中濃度推移を予想できると、とても治療効果が得られないと考えることが正常の思考回路である。

 ”500mL/minは極端ですよ、だっちょさん!”という意見は最もで、そりゃ当たり前である。ならば、どの程度上昇すれば問題となるのか、そこを議論するべきである。アミノグリコシド系薬の場合、100%腎糸球体ろ過によって排泄される。すなわち、肥満の状態において、どの程度糸球体ろ過速度が上昇するのか、を考えればいいわけである。
今回のご講演の中で紹介していた論文をメモり忘れたが、例えばGFRは非肥満患者と比較してGFRと腎血流量はそれぞれは61%、32%上昇していたとの報告がある(Chagnac et al. J. Am. Soc. Nephrol. 2003; 14: 1480-1486)。ならば、投与量は1.5倍に上昇させるべき、と言えるわけであり、ここまで変化があるならば問題となると言える。昨今いわれているARCなどは、Ccrが1.2-1.5倍程度の上昇でやいやい議論がされているわけであるのに、このアミノグリコシド系薬は問題ないとは言えないはずである。

 じゃあ1.5倍の投与量増分をどこで補うか、という議論に移る。単純に1回投与量を上昇させても、その後の消失が早すぎれば効果は薄い。それに基本的に今のPK/PDの目標値は、最大殺菌効果が得られるところとなっているので、あまり上げすぎても効果増は得られない。となると、もっとも効果的な投与方法は、1回投与量は1.5倍に上昇させるが、ちょうどよいピーク濃度が得られるように、点滴時間を長めに設定することである。その点滴時間を設定するためには、各種ソフトウェアが効果を発揮するだろう。

こういうことが出来るのが薬剤師であり、医師にそのロジックと必然性を説明することで、よい信頼関係が築けるはずである。

この説を証明することは並大抵のことではない。アミノグリコシド系薬という使用量の少ない薬剤を、高度肥満という病態の集団で、証明された感染症を抽出して、アミノグリコシド系薬単剤で治療する必要があるためである。そして肥満患者とGFRの関係のモデルもしっかりと構築しなければならないし、除脂肪体重などの概念を取り入れることが良いと思われる。多施設共同試験を組まねば無理であろう。ただ、極めてchallengingなので、もしも興味がわいた先生がいらっしゃれば、ぜひ一緒にしませんか。




皆様今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
posted by だっちょ at 23:13| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする