2017年11月15日

世界抗菌薬啓発期間2017です。薬剤師向けのメッセージはいかに?

目下期間中のこの頃、すこーしだけブログで取り上げてみたいと思います。
http://www.who.int/campaigns/world-antibiotic-awareness-week/en/

WHO がWorld Antibiotic Awareness Week, 13-19 November 2017 として取り上げていますが、主に不必要な抗菌薬を使わないように、という一般市民に向けたできるだけわかりやすいメッセージが挙げられています。では、薬剤師向けのメッセージを考えてみましょう。

このような啓発期間の設定されている背景には薬剤耐性菌(AMR)に対するグローバルアクションプランが採択されていることが挙げられます。つまり、薬剤耐性菌の出現や伝播を防止するための取り組みであると言えます。

では抗菌薬適正使用においては、何を気を付ければよいでしょうか。重要な概念は、”抗菌薬を使わなければ薬剤耐性菌は出現しない”、というものです。もちろん不必要な投与を避けるべきなのは事実ですが、それでも使わなければならない場面が出てくるから困っているのです。そこで、ここは、”できるだけ抗菌薬を使わない期間を設ける”とした方が現実的です。

そのためには、二つの本質にたどり着きます。
1.できるだけ狭いスペクトラムを持つ抗菌薬を使うこと。
2.最大効果を得て、短期間で抗菌薬をやめること。



1.は、つまりde-escalationです。適切な培養を取って感染臓器、原因微生物を特定してからの抗菌薬の適切な選択、ということになり、考え方が実にシンプルです。

2.はPK/PD 理論に基づいた抗菌薬の用法用量の選択が最も意識されがちですが、それ以外にも、ソースコントロールや免疫賦活、ガイドラインに沿った適切な治療期間の順守、などがあり、これはとても複雑なのです。

PK/PD 理論の活用は薬剤師が最も得意とするところです。どんどん評価して、実践していけばよいと思います。
ソースコントロールは、せずにmedicalに様子を見る、、、とすることもこれまで行われてきました。もちろん侵襲につながりますので、しないに越したことはありません。患者一人を治療するためには、確かに必要ない場面もあるでしょう。ただし、そのような場合でも適切なソースコントロールが”できる”のであれば、やるべきです。そうすることで、抗菌薬の治療期間が確実にぐっと短くなります。つまり、目の前の患者の治療だけを視野に入れるのではなく、あくまでその後の世界(耐性菌worldへの懸念)まで視野に入れる必要があるということです。もちろんrisk & benefit を考慮してのソースコントロール実施が重要ですが、あくまでbenefitとは、目の前の患者のみならず、世界に目を向けるべきではないでしょうか。

免疫賦活には、発熱性好中球減少症患者のG-CSF製剤投与などがあります。

ガイドラインに沿った治療期間の順守は、臨床所見や検査データなどだけで治療がやめられがちな感染症を診る場合にとても重要です。例えば複雑性尿路感染症、肝膿瘍、MSSA菌血症、骨髄炎、などがあります。これはむしろ長期投薬につながるために、”できるだけ抗菌薬を使わない期間を設ける”という意図からの耐性菌の出現抑制とは異なる、とも考えられがちです。しかし、先を見るとそうではなく、再発すれば重症化し、より長い期間を使わなければなるために、治療期間をきちっと順守することは、トータルでは”できるだけ抗菌薬を使わない期間を設ける”ことに貢献しているのです。


これらの問題点を抽出するためには、まず抗菌薬投与患者を視ることが大事です。だからこそ許可制や届け出制を最大限に活用するべきです。把握しやすい状態が現時点であることを、喜ぶべきと思われます。

ここまでくると、抗菌薬投与患者をうまく抽出したうえで、薬剤師としてやりやすいのは大体以下の順序になりますでしょうか。一つでも行えれば、それはASPだと思います。


・PK/PD 理論に基づいた投与量調整(2)
・ガイドラインに沿った治療期間の順守(2)
・De-escalationの推奨(1)
・そもそもの抗菌薬の選択(1)
・その他(2)


()内の数字は、うえで示した二つの本質のどちらに該当するかを入力してみました。こうしてみると、(2.最大効果を得て、短期間で抗菌薬をやめること。)が多いのですね。それぞれの内容について、それぞれどちらの手法で”できるだけ抗菌薬を使わない期間を設ける”にトライしているのか、を意識すると、効率的な介入と自信につながるのではないかなぁと思います。
少なくともASPのガイダンスなどをみても、この4点が期待されていると思いますので、この辺を頑張りましょう。

余談ですが、私は、ICUではよくカテ抜去とか提案しています。大まかな判断基準は、末梢ルートが取れるほどに浮腫が改善していること(抗炎症状態では浮腫が進んで末梢ルートが取りづらい)、中心静脈を必要とする注射剤(TPN、ノルアドレナリンぐらい)が必要なくなること、そしてもちろんカテ感染が疑われることです。
とはいえ、これらはASTとしてはやらなくてよいと思います。AMR対策の一つではありますが、AST の仕事ではないと思います。しかし、この活動はどこも主体的にやる母体がないように思います。CRBSIは起きたことをサーベイランスする、日常の発症につながらないか刺入部を観察する、といったもので(もちろん不要なものは一刻も早く抜去するようにガイドラインでも推奨されてますが)、不必要なものを抜去できないか、という観点の介入はあまりありません。私がICUでやっていることは病棟薬剤業務の一環ですから、このような活動は、病棟薬剤師と連携してやっていくことも、よい介入になると思っています。


いろいろ書いてみましたが、参考になる箇所があるならば幸いです。
posted by だっちょ at 00:28| Comment(0) | 感染症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月25日

5ht ACID CAFE のご案内(2017/11/3)

大変急な話ですが、11月の医療薬学会開催時にACID CAFE を開催しますので、案内をさせていただきます。
参加希望者は10月30日までに私までメールください(下記参照)
よろしくお願いします。
ちなみに参加者数の変遷としては、第1回25名から数を増やしており、第4回では42名となっております。


5th ACID CAFE
日時:2017/11/3 19:30〜
場所:京おばんざい ・ 完全個室〜 かがり 〜 海浜幕張店
   千葉県千葉市美浜区ひび野1-14
費用:4000円

概要
“ACID”では、様々な分野の薬剤師が研究内容や臨床業務について客観的かつ建設的に議論する場として、メーリングリストや、お酒を伴った情報交換会を提供しています。これらの活動を通して、薬剤師の臨床業務および研究の質の向上、または指導力向上に寄与し、医学・薬学的エビデンス創出の推進に貢献することを目的としています。
この度、下記の通り 5th ACID CAFE を開催する運びとなりました。万障繰り合わせの上、多数のご参加をお待ちしております。

〜参加者の皆様へ〜

皆様の研究テーマおよび業務内容について、まとめた資料をぜひともお持ちください(作成方法は下記参照)。ただし、必須ではありません。まずはお気軽に、ご参加いただくだけでも大歓迎です。内容やテーマ、既発表・未発表は問いません。様々な分野からの意見・指摘により、ご自身の研究がより良質なものへと変化するはずです。
薬剤師から研究者、初学者からエキスパートまで、 “One for All, All for One”の精神で忌憚のない意見とアドバイスを出し合いながら交流し、本会をお楽しみいただければと思います。

【資料作成方法】
・A4 1枚程度(形式不問)
・25 名程度分をご用意ください。


幹事:尾田 一貴、鈴木 達也
代表連絡先:尾田一貴 (熊本大学医学部附属病院 薬剤部)
連絡先:メールなどでご連絡ください(kodahomme(at)yahoo.co.jp、ほか)

http://acid.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=26812
posted by だっちょ at 07:07| Comment(0) | ACID | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月23日

BMs-Pod改定のお知らせ(ver 8.02)

大変久しぶりですが、BMs-Podをver 8.02に改定しましたのでお知らせします。

http://bmspod.web.fc2.com/

今度書籍の一部でBMs-Podの紹介をするんですが、その中でのシミュレーションに対応するために少し改定しました。ダウンロードページがキャッシュの関係上か何かでうまく読み込んでいない(8.00のまま)場合がありますので、その場合は各々のブラウザの「ページの更新」を行えばよいと思います。

改定の詳しいところはまたその書籍が出てからするとして、他には、バンコマイシンのPPKモデルをややモディファイしたものを載せてます。

バンコマイシン「VCM」(mod)
・クリアランスの上限を、3.81ではなく、6*(体重/60)^0.75 とした(この式の意味はいずれまた)
・分布容積を体重当たり(原著に基づいて1.16 L/kg)とした。

うちはたいていこれでやってます。使いやすいと思います。
モデルを原著から修正して行うことに意義を唱えることもありますが、そもそもモデルの解釈方法の方が難しいので、臨床的には全然問題ないと私は思います。もちろんそこに根拠は必要ですが。

それと、やや速度改善に着手してます(まだまだですが)

本当はver 9.0 をアップしたいのですが、知財の関係で私の裁量ではアップできません。来年3月までの限定バージョンで良ければお送りしますのでお知らせください(CRRTや、パラメータの容易な修正が可能です)。

よろしくお願いします。
posted by だっちょ at 18:57| Comment(0) | BMs-Pod | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月15日

小児腹膜透析(PD)患者に対するバンコマイシン投与量調整の考え方について

9kgの小児に対して、初回に腹膜透析液からのVCMを投与した量が135mgであり、連日PDを行った後、48時間後に18 mg/Lの血中濃度が得られた、という場合、どの程度補充するべきか、という考え方を示す。

もしも投与後に血中濃度が消失していない(ほぼ横ばい)と仮定すると、分布容積は135/18 の式により7.5 Lとなる。ということは、患者の体重が8kgということを考慮すると、0.83 L/kgの分布容積を持つことになる。しかし、小児のVCMの分布容積は大きくても0.6 L/kg程度なので自尿などでのクリアランスがあるのかもしれないと考えておき、0.6 L/kgの式により得られる推定分布容積 5.4 L でかんがえると、投与後の最大血中濃度は 135/5.4 の式により25 mg/Lが得られているはず、と考える。すると、PDを含めて48時間の時間をもって 25 → 18 への減少が得られたので、48時間で72%に減少するといえる。

すると、目標血中濃度を 15 mg/L とするならば、48 時間後に72%へのダウンを見越して、投与後は 15/0.72 の式により投与後は 20.8 mg/Lの血中濃度が得れていればよいという計算になる。今18 mg/Lの血中濃度なので、 20.8 - 18 の式により、2.8 mg/L の血中濃度増加を期待する必要がある。分布容積は 5.4 L を推定しているために、2.8×5.4の式により、15mgの追加投与が必要になると計算される。その次はきっと15 mg/Lを示していると思われるので、20.8-15 の式により、5.8 mg/Lの血中濃度増加を得るためには、5.8×5.4 の式により31.3 mg/Lの補充が必要にあるというわけである。これが維持量である。

より細かい話をするならば、どの程度吸収されるかを考えるとより精密になる。

実は透析液と分布容積の比を計算すると、投与量に対する吸収量を判断することが出来る。今、使用する透析液をX、分布容積をVdとするならば、VCMの混入されたXと、混入していないVdが合わさった場合、あくまで濃度勾配によって吸収を受けることとなる。すなわち、X+Vdの容積で、平衡状態に達することになる。つまり、吸収量は、Vd/(X+Vd)ということになる。通常バンコマイシンならば、XはVd(5.4 L) に比べて十分に小さいはず(1/20等)なので、その点は普通考慮する必要がない。
さらに細かい話をすると、実は、体循環されている薬物も、同様に平衡を受ける。つまり、18 mg/Lの血中濃度が、Vd)/(X+Vd)の式により平衡を受ける。1/20の比があるならば、18 mg/Lの血中濃度はその過程で5 % が減少することになる。これはかなり少量(17.1 mg/L)なので無視できるというわけである(これが腹膜透析における薬物除去の本質)。やや平たく言えば、腹膜透析液量×現在の血中濃度で除去される量(mg)がわかる。ただし、遊離体分率もちゃんと考えると、より影響は少ないことは理解できよう。

一方で、遊離体分率が低く、極端に分布容積が小さい薬物を扱う場合は、この平衡を考慮する必要がある。なぜなら、さっきの分布容積 0.83 L/kgはあくまでVd/Fであり、吸収率の低下による見かけ上の増大とも言えるためである。この場合、吸収率は0.6 / 0.83 により、吸収率は72 %といえることができるので、もしもXとVdの日が1:2程度のものがあるのならば、この吸収率に合致する。




というかなりコアだけども貴重な事例。他の事例を数値を変えて記載しました。
腹膜透析の場合、ガイドラインがないとか言う前に、自分で計算した方が正確だし、どこによくわからない点があるかも気づく(小児腹膜透析患者における体重当たりの分布容積など)。こういう点についてPubmedで調べてみると、

検索ワード1 peritoneal dialysis vancomycin pharmacokinetics children → 3件
検索ワード2 peritoneal dialysis vancomycin pharmacokinetics children → 0件

日本人の報告ゼロ

分布容積さえわかれば、より正確な投与設計が出来るんですが、難しいところですね。
posted by だっちょ at 12:45| Comment(0) | 薬物動態 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月05日

このまま走ったらどうなるのだろう

2017年9月のTDM学会は本当に濃密だった。ACIDのシンポジウムもそうだし、ベーシックセミナーさせていただいたことも踏まえて、ここまで人の前に立った学会はこれまでになかった。それに海老原賞を受賞できたことも、本当になぜ受賞できたか、自分自身にはまだまだ自信は持てていないので実感がわかずに空虚である。

またいずれ報告するが、2018年3月のとある学会でもシンポジウムをオーガナイズさせてもらう権利を得た。いろんな学会の一般演題にはこれからも出す予定ではあるが、さらにはシンポジウムをオーガナイズすることで、より多くのアピール時間をもらえることは事実で、そのうまみが、最近よくわかった。最初のシンポジスト経験は2016年12月の臨床化学会だったんだけども、それから2017年3月の集中治療医学会、4月の化学療法学会ときて、9月のTDM学会は二つ掛け持ち(シンポジウム×ベーシックセミナーの意)した。さらには11月の医療薬学会で一つ、2018年2月に一つ、そして3月である。

その間、招待講演もいくつかある。お招きいただくのはありがたいことで、どんどん活動の幅を広げていきたい。

と、まだ学位もこれからという時期にいろんな仕事が回ってきた。ACIDのような社会貢献活動も含めて続けていきたいが、やはり私の今の活力を支える根底には、一般病院での経験とそこから湧き出る反骨精神のように思う。今後何になりたいかの具体的な目標は実は定まっていない。アカデミアも興味があるし、集中治療や感染症、TDMの臨床業務に沿った臨床研究も相当に楽しい。一方で、自分が構築してきたこれまでは、まだまだ十分に広めるには至っていない。そこで、その知識というか経験というか、どんどん広めていかなければならない時期に来たと思っている。そういう風に思う自分がいるからこそ、教育の方に自分自身を運んで行った方が良いのかもしれない。

一方で、意外に思う人もいるかもしれないが、臨床能力を積み重ねることで、クリニカルクエスチョンの質がどんどん変化する。つまり臨床研究の質が向上するともいえる。第一線の薬物療法に触れることで、そして解剖学や生理学という薬剤師が基本的に苦手としている学問に触れていくことで、第一線で働く医師たちと同じ臨床課題を共有することが出来るようになるが、そのときにやっと見えてくる薬物療法に関するクリニカルクエスチョンがあるのだ。つまり、臨床能力を高めなければ、解決するどころかそもそも見えていないものなのだ。

だからこそ臨床を離れたくはないという考えも強い。少なくとも学位をとるまではこのまま走り続けてよいし、走り続けるべきなのだろう。しかし、その先何がどうなるのか、どこかで決断しなければならない時が、ここ数年で訪れることは理解している。そのときに、迷わず決断できるように、心の準備を整えておきたい、と思う。
posted by だっちょ at 02:42| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする